「原状回復は貸主指定の業者で行うこと」。店舗やオフィスの賃貸借契約書によくあるこの一文を見て、「指定業者にしか頼めないのか」と諦めていませんか?
実は、指定業者特約があっても、交渉次第で借主側の手配した業者に依頼できるケースは少なくありません。そして直接依頼が実現すると、多層の下請け構造で発生していた中間マージンが外れ、費用は大きく変わります。
この記事では、店舗修繕の専門業者『インテリアワーク』が、原状回復を直接依頼できる条件の見極め方と、貸主・管理会社への相談の進め方を、実務の手順に沿って解説します。なお、費用相場そのものについては店舗の原状回復費用の相場と適正価格に抑える方法で詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
なぜ指定業者だと高くなりやすいのか(30秒のおさらい)
指定業者への発注は、貸主→管理会社→元請け→下請けと発注が多層になりやすく、各段階の手数料(中間マージン)が工事費に上乗せされる構造があります。競争原理も働きにくいため、価格は市場相場より高止まりしがちです。直接依頼は、この構造ごと取り除く方法です。
前提知識:工事区分「A工事・B工事・C工事」を知っておく
貸主との交渉の前に、押さえておきたいのが工事区分の考え方です。テナント物件の工事は、慣例的に次の3つに分類されます。
| 区分 | 内容 | 業者の選定権 | 費用負担 |
|---|---|---|---|
| A工事 | 建物の躯体・共用部・ビル全体の設備(外壁、共用廊下、基幹設備など) | 貸主 | 貸主 |
| B工事 | 専有部だが建物全体に影響する工事(空調、防災設備、分電盤など) | 貸主(指定業者) | 借主 |
| C工事 | 専有部の内装・造作(間仕切り、床・壁の仕上げ、什器など) | 借主(交渉の余地が大きい) | 借主 |
ポイントは、原状回復の大部分を占める内装解体・仕上げ材の撤去は「C工事」に当たることです。C工事は本来、借主側に業者選定の裁量がある領域。「原状回復=すべて指定業者」と思い込む必要はなく、C工事部分だけでも直接依頼に切り替えられれば、費用は大きく圧縮できます。
直接依頼を実現する4つの実務ステップ
ステップ1:契約書の「原状回復」「特約」条項を確認する
まず賃貸借契約書で次の3点を確認します。
- 原状回復の範囲(入居時の状態まで?スケルトンまで?)
- 指定業者特約の有無と文言(「貸主の指定する業者にて行う」「貸主の承諾を得た業者にて行う」では意味が大きく違います)
- 工事区分表の有無(B工事・C工事の線引きが明記されているか)
「貸主の承諾を得た業者」という文言なら、承諾さえ取れば直接依頼が可能です。完全な指定文言でも、次のステップの交渉余地があります。
ステップ2:直接依頼の見積もりを先に取っておく
交渉には材料が必要です。貸主に相談する前に、借主側で依頼したい業者から、項目別の明細付き見積もりを取得しておきましょう。指定業者の見積もりと比較できる状態を作っておくことで、「この内容・この金額で、こちらの業者に任せたい」という具体的な相談ができます。
ステップ3:貸主・管理会社へ「条件付きの相談」として持ちかける
交渉のコツは、対決ではなく「貸主側の懸念を先回りして潰す」ことです。貸主が指定業者にこだわる理由は、建物を知らない業者に雑な工事をされるリスクを避けたいからです。そこで、次のような条件を添えて相談します。
- 「C工事に当たる内装部分のみ、こちらの手配業者で施工させてほしい。B工事は指定業者にお願いする」
- 「施工業者は店舗・テナント工事の実績があり、貴ビルの工事規則(申請書類・養生・作業時間)に完全に従う」
- 「施工前後の写真付き報告書を提出し、査定にお使いいただける」
「全部をこちらでやらせてほしい」より、「範囲を区切った条件付きの提案」の方が通りやすいのが実務の実感です。

ステップ4:承諾は必ず書面(メール可)で残す
口頭承諾のまま着工するのは絶対に避けてください。後から「聞いていない」となれば、工事のやり直しや敷金トラブルに発展します。工事範囲・業者名・工期を明記したメールで承諾をもらうだけで十分です。誠実な管理会社であれば、この確認を嫌がることはありません。
直接依頼の注意点:安さだけで業者を選ばない
直接依頼が実現しても、選んだ業者の質が低ければ本末転倒です。貸主の査定に通らない仕上がりだと、結局やり直し費用が発生します。業者選定では次の3点を確認してください。
- テナント・ビル物件での施工経験:工事申請書類の作成、共用部の養生、管理会社との調整に慣れているか
- 明細付き見積もり:「一式」ではなく項目別の内訳を出せるか(貸主への説明資料としても必須です)
- 写真付き作業報告書:査定の証拠資料になります。報告書の見方は作業報告書とは?記載内容と確認すべきポイントをご覧ください
よくある質問
Q. 交渉しても断られたら、それまでですか?
指定業者での施工が確定でも、直接依頼の見積もりは「価格交渉の材料」として機能します。「同内容で他社はこの金額。内訳の説明を」という根拠ある交渉で、指定業者側が見直しに応じるケースは多くあります。また、査定前の目立つ破損の事前修繕は借主判断で行える場合が多く、この部分だけ直接依頼する方法もあります。
Q. 管理会社の立場ですが、テナントから直接依頼の相談を受けました。認めるべきでしょうか?
工事規則の遵守と報告書提出を条件に認める管理会社様は増えています。貸主様側の工事負担が減り、退去がスムーズに進むメリットもあります。当社は管理会社様側からの「テナント退去後の補修」のご依頼にも対応していますので、双方の立場からのご相談を歓迎します。
Q. 居抜き退去の場合も同じ考え方ですか?
居抜き譲渡が成立すれば原状回復自体が大幅に減りますが、貸主の承諾が必須である点は同じです。契約確認→貸主相談という手順は変わりません。
まとめ:直接依頼は「準備と相談の順番」で決まります
原状回復の直接依頼は、契約確認 → 見積もり準備 → 条件付きの相談 → 書面での承諾、という順番を踏めば、決して特別なことではありません。鍵になるのは、貸主側が安心できる材料(実績・明細・報告書)を先に揃えておくことです。
私たちインテリアワークは、貸主・管理会社への提出にそのまま使える明細付き見積もりを無料で作成しています。「まず交渉材料がほしい」という段階のご相談も歓迎です。契約書の該当箇所と店舗の写真をお送りいただければ、直接依頼の可能性と概算をお答えします。
